8月26日、ドイツのケルンでゲームの見本市が開幕した。展示面積23万3,000㎡が史上初めて空きなく売り切れた。ゲームは店舗も棚もなくダウンロードで売る商品なのに、それを直に触ろうと5日間で35万人がチケットを買って歩いて入る。店舗が要らなくなった産業が、世界で最も大きな売り場をつくっている。
1.会期は8月26日から30日までの5日間。初日は業界と報道関係者だけが入り、一般公開は27日から。会場はケルンの見本市会場ケルンメッセで、今年はここの展示面積23万3,000㎡が初めて全て売れた。
2.ブースを出した企業は1,600社を超え、その70%がドイツ国外から来た。昨年の出展社は1,568社。数字だけ見れば大きな変化はないが、区画が埋まりきったという事実が違う。空きがなければ値を決めるのは売る側だ。
3.入場券は平日31.50ユーロ、土曜が41ユーロ。会場に当日券売り場は置かず、オンラインの事前販売だけを受ける。昨年の来場者は35万7,000人で、今年もその辺りを見込むと主催者は明かす。
4.会期でないとき、この建物は空の箱だ。ホールには固定された店も座席もなく、床と天井のトラス、電気と通信の引き込みだけが残る。埋めるのは借りた側の仕事。見本市会場の事業を賃貸業と呼ぶ理由。
人のいない日の入口ケルンメッセの東入口。ガラスのファサードの下の道路が空いている。©Raimond Spekking, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
5.値は床面積で決まる。エンターテインメント区画の列形ブースが1㎡あたり152.50ユーロから182.50ユーロの間で、分けるのは場所ではなく申込の時期だ。冬に押さえれば安く、夏に押さえれば高い。この値に入っているのは床だけ。壁も電気もカーペットも別に買う。
언제 신청했느냐가 ㎡당 값을 가른다
同じ床でも5か月遅く押さえると20%高くなる。
6.その床の上に、5日使って壊す建物が建つ。2階構造を上げ、サイネージを回し、待ち列をポールで仕切る大型ブースなら、賃料は総費用の一部にすぎない。設計と施工、輸送、人員、撤去がその上に乗る。ドイツの媒体がまとめた出展費用は無料から50万ユーロまで。
5日使って壊す建築2017年gamescomのStar Citizenブース。上部に吊った映像キューブと、手前の待ち列の仕切りが見える。©QSO4YOU.com [DE], CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons
7.中に入って目に入るのは画面ではなく席の数だ。円形カウンター一つにモニターが4台、ヘッドセットとコントローラーが同じ数だけ置かれる。天井には遠くからブースを見分ける造形物を吊る。一人が一席を握る時間はふつう10分から15分。ブースが数えるのはその日の売上ではなく、何人が手を触れたかだ。
体験席の密度inZOIブース。天井に吊った猫の造形の下に体験席が並ぶ。©Dulamas, CC0, Wikimedia Commons
一席にモニター4台2024年gamescomのTowerborneブース。風車の造形の下に円形の体験席を置いた。©Sergiy Galyonkin, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons
8.ゲームは売るのに店舗が要らない商品だ。Steamには毎年1万本を超えるゲームが並び、ダウンロードにかかる時間は数分。ではなぜ皆ケルンまで行って床を買うのか。この産業のボトルネックは流通ではなく発見だ。つくったものを知らせられなければ、無いのと同じ。
9.列はだから広告ではなく信号だ。どのブースの前が長く、どちらが空いているかがその場で目に見え、その光景がさらに映像で広がる。開幕放送は昨年7,200万回再生された。会場の35万人よりはるかに大きい数字だが、その放送をつくる材料が会場そのものだ。
画面では売れないもの2024年gamescomでVRヘッドセットを着け、乗り物型の装置にまたがった来場者。©Sergiy Galyonkin, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons
10.今年のインディーゲーム会社は420社を超え、昨年より16%増えた。大手と同じ屋根の下にブースを構える値は、その会社にとって広告費より安い。数坪の区画の前にも列は立つのだから。主催者が今年掲げた言葉も小さなチームの成功。
ブースの前に置いた物2025年gamescom。ゲームのグラフィックをまとった車を1台置き、その後ろに来場者が集まった。©Dulamas, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
11.業界来場者を除いた一般来場者を31万人、割引券を混ぜた平均のチケット単価を33ユーロと見れば、入場収入は1,020万ユーロになる。曜日別の販売数が公開されたことはないので、あくまで概算。
12.ブースの方が大きい。展示面積の半分が実際の賃貸区画と見て1㎡あたり167.50ユーロを掛ければ、賃貸収入は1,950万ユーロになる。入場収入の2倍近く。来場者がこの催しの客に見えるが、金を払うのはブースを建てた企業だ。
부스 임대가 입장권의 두 배
チケットを売る催しに見えて、売上の中心は床の賃貸だ。
13.1㎡あたり167.50ユーロを5日で割ると1日33.5ユーロ。ソウル都心のプライムオフィスが1か月で受け取る1㎡あたりの賃料に管理費まで足すと、だいたいその辺りになる。代わりに売れる日が1年に数日しかないので、見本市会場は単価と稼働日数を交換した資産だ。
14.ケルン市はここに35万ユーロを入れる。シティフェスティバルの無料公演を開く金で、来場者一人あたり1ユーロほど。その見返りはホテルと飲食店が受け取る。都市が催しを引き留めるときに計算するのは入場料の配分ではなく、この波及だ。
1年の大半ケルンメッセの南入口と11ホール。前庭にクレーンとトラックが立つ。©Raimond Spekking, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
15.この催しはもともとケルンのものではなかった。2002年からライプツィヒでGames Conventionという名で開かれ、欧州最大だった。交通と宿泊が人を受けきれなくなり、業界団体がケルン行きを選んだが、ライプツィヒが名前の権利を売らず新しい名がついた。それがgamescomだ。2009年の第1回の来場者が24万5,000人。
第1回の南入口2009年8月、ケルンで初めて開かれたgamescomの南入口。ファサードにロゴが付き、階段に人が集まった。©Raimond Spekking, CC BY-SA 4.0, Wikimedia Commons
16.同じ時期、米国の側は逆に進んだ。E3(Electronic Entertainment Expo)はオンライン開催に移って赤字を出し、2023年末に主催団体が恒久的な終了を告げた。東京ゲームショウは来月、史上初めて5日間の日程で30周年を開く。画面に移った方が死に、床を多く買った方が残った。
舞台に上げたゲーム2015年gamescomのStreet Fighter Vの実演ステージ。アーケードスティックを握る参加者と、コスプレ姿の2人。©Sergey Galyonkin, CC BY-SA 2.0, Wikimedia Commons
17.ケルンで5日間、23万3,000㎡が初めて空きなく売れ、その床の1日単価は1㎡あたり33.5ユーロになる。賃料は出展社が使う金の一部にすぎない。設計・施工・輸送・撤去がその数倍で乗り、出展社がその総額を出す理由を見つけられなければ、区画は売れてもブースは貧相になる。同じ規模を別の場所で立てるときに押さえにくいのも、会場ではなくこちらだ。区画を売り切ることと、見る価値のある催しをつくることは同じ仕事ではない。