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卓上で · 焼き上げる最後の工程を客の前へ移した。奥にはすでに焼けた塊。©ダイヤモンドダイニング
卓上で焼き上げる最後の工程を客の前へ移した。奥にはすでに焼けた塊。©ダイヤモンドダイニング
デイリー dining

客が焼く席ごとに炭代600円が付く(東京・炉端会席)

2026.08.27

品川駅から徒歩5分、オフィスビル4階に100席。8月26日に開いたこの店は、全てのテーブルに炉端を埋め込んだ。コースは5,500円から、飲み放題を付ければ8,000円。炭代はチャージとして別に600円を取る。

1.東京都港区港南2丁目、JR品川駅港南口から徒歩5分のオフィスビル4階に炉端会席 KAKU 品川が8月26日に開店した。100席。会席は決まった順に出るコースを指し、炉端は炭火の前で焼く方式を指す。この二語を一つの卓に載せたのが、この店の設計だ。
港南地区 · 品川駅の東側はオフィスが立ち並ぶ業務地区。この店はその奥のビル4階にある。©Famifamifami · Public domain
港南地区品川駅の東側はオフィスが立ち並ぶ業務地区。この店はその奥のビル4階にある。©Famifamifami · Public domain
2.手がけたのはダイヤモンドダイニング。上場するDDグループの飲食会社で、2010年に店ごとに違う看板を掲げる方式で100店を達成し、名を知られた。現在の直営は310店。直近の四半期で新規出店は1、退店は2。縮小中の会社が100席を新しく開いたことになる。
3.場所は1階ではなく4階だ。通りすがりの客を初めから計算に入れていないということで、実際この店は予約とコースで回る。個室は6名・8名・10〜20名の三種類。貸切の上限も20名。
店内構成 · 左が炉端を埋め込んだテーブル席、右が調理台と向き合うカウンター席。格子と木でゾーンを分けた。©ダイヤモンドダイニング
店内構成左が炉端を埋め込んだテーブル席、右が調理台と向き合うカウンター席。格子と木でゾーンを分けた。©ダイヤモンドダイニング
4.テーブルの中央がくぼんでいて、そこに炭が入る。座るとまず熱が顔の高さまで上がってきて、脂が炭に落ちるたびに短くジュッと鳴り、煙が薄く立つ。会話がその音に合わせて途切れては続く。会食の席で沈黙が気まずくならない理由がここにある。手を動かす用事が絶えないからだ。
立てて焼く · 火の周りに串を立て、輻射熱で火を通す方式。裏返す代わりに角度を回す。©ダイヤモンドダイニング
立てて焼く火の周りに串を立て、輻射熱で火を通す方式。裏返す代わりに角度を回す。©ダイヤモンドダイニング
5.火の使い方はもう一つある。乾いた藁に火を付けて一気に表面だけを焼く藁焼きで、炎は1メートル近くまで上がり、20秒ほどで収まる。煙の香りが魚の表面にだけ薄く乗り、中は生のまま残る。鯖や鰻、鶏をそう出すという。
表面だけ · 表面に焦げ目が残り、断面は赤いまま。塩とわさびを添えて出す。©ダイヤモンドダイニング
表面だけ表面に焦げ目が残り、断面は赤いまま。塩とわさびを添えて出す。©ダイヤモンドダイニング
6.コースは13〜14皿。前菜が先に並び、木箱に入った食材がそのまま出てきて客が焼き始め、最後は店内で精米した米を羽釜で炊いて出す。のどぐろ、金目鯛、鰻、四万十牛、土佐鴨、タラバガニ、ふぐが品書きに並ぶ。会社を興した松村厚久は高知県の出身で、四万十も土佐もその土地の名だ。
一式 · 中央の木箱が客の焼く分。右上が精米して炊いた飯。©ダイヤモンドダイニング
一式中央の木箱が客の焼く分。右上が精米して炊いた飯。©ダイヤモンドダイニング
7.値段は三通り。料理のみで5,500円・7,500円・9,500円、2.5時間の飲み放題を付けると8,000円・10,000円・12,000円になる。30種以上の飲み物を載せて2,500円という組み立てで、ここで金額を決めるのは何杯飲むかではなく、予約する人がいくら使うと先に決めるかだ。
코스 세 가지와 음료를 붙였을 때의 값 단위 엔 · 개점 특가는 9월 30일까지 · 자릿세 600엔은 별도 AKANE 13접시 5,500 8,000 개점 특가 6,500 KOHAKU 13접시 7,500 10,000 개점 특가 8,000 ASAGI 14접시 9,500 12,000 특가 없음
2,500円の差薄い棒が料理のみ、濃い棒が飲み放題込み。差は三通りとも同じ。©Cash and Space
8.その上にチャージ600円が乗る。案内には炭代が含まれると書かれている。客が自分で焼く店が、焼くための燃料を別に請求する。1日120人が座るとみれば、月に200万円台。この階の賃料として計算した額と近い規模。どちらも公開された数字ではなく、ここで立てた計算だ。
備長炭 · 硬く焼き締めた炭は火力が長く続く。チャージ600円が賄うのはこれ。©STRONGlk7 · CC BY-SA 3.0
備長炭硬く焼き締めた炭は火力が長く続く。チャージ600円が賄うのはこれ。©STRONGlk7 · CC BY-SA 3.0
9.回転は時間が決める。飲み放題が2.5時間で区切られ、夜の営業は17時から23時までの6時間。計算上は2回転が上限で、実際は1.2回転ほどとみる。焼くのに時間がかかることが、この業態の価値であり限界でもある。火が通るのを待つ20分は、客には楽しみで、店には売れなかった席。
10.個室が三種類あり、テーブルごとに炉端が入るぶん席の間隔は広い。100席なら330㎡前後。品川区のオフィスは㎡あたり月6,500円ほど、品川駅周辺は5,500〜6,000円台なので、330㎡なら月190万円ほどになる。
11.客単価をチャージ込み8,600円とみて夜だけで計算すると月2,300万円台。9月に始まる平日昼を足せば2,600万円に届く。賃料は売上の7%台。
객단가 8,600엔은 어디로 가나 회사가 밝힌 값이 아니라 일본 이자카야 평균 비율로 나눠 본 것 · 실제와 다를 수 있다 식재료비 34% · 2,920엔 인건비 26% · 2,240엔 임차료 7.5% · 640엔 나머지 32.5% · 2,800엔
FL60%食材費と人件費を合わせて60%。業界が危険水準とみる線にちょうど接している。©Cash and Space
12.この場所を選んだ理由は昼ではなく夜にある。品川港南は大企業の本社が集まる業務地区で、オフィスの空室率は3.5%まで下がっている。個室を20名まで用意したのは部署の会食と接待を取りにいく合図で、飲み物を束ねて金額を一つにしたのも同じ狙い。会食の幹事が最も恐れるのは味ではなく精算だからだ。
昼 · 9月から平日の昼だけ出す。夜のコースを鍋一つに縮めた構成。©ダイヤモンドダイニング
9月から平日の昼だけ出す。夜のコースを鍋一つに縮めた構成。©ダイヤモンドダイニング
13.焼く行為そのものが商品だと最もよく示すのは、クレームだ。ステーキ店で肉が固ければ厨房の落ち度だが、客が自分で載せた肉が固いのは3分置きすぎたから。焼き加減をめぐるやり取りが丸ごと消える。自分で焦がした肉には、文句を言う相手がいない。
火を使わない皿 · コースの序盤は焼かないもので埋める。炉端が温まる時間をここで稼ぐ。©ダイヤモンドダイニング
火を使わない皿コースの序盤は焼かないもので埋める。炉端が温まる時間をここで稼ぐ。©ダイヤモンドダイニング
14.炉を囲んで座る形そのものは新しくない。日本の民家の囲炉裏は床を四角く切って灰を詰めた暖房兼調理の装置で、その周りの座は家の中の序列で決まっていた。これを商売に移したのが1950年代の仙台と釧路の炉端焼きだ。ただしその頃の炉端は、焼く人が店主だった。
囲炉裏 · 床を掘って灰を詰め、天井から下ろした自在鉤に鍋を掛ける。暖房と調理を兼ねた。©JosephCoston · CC BY-SA 4.0
囲炉裏床を掘って灰を詰め、天井から下ろした自在鉤に鍋を掛ける。暖房と調理を兼ねた。©JosephCoston · CC BY-SA 4.0
15.焼く仕事を客席へ渡せば厨房の人件費が減るという計算は、この業態では成り立たない。会席のコースである以上、13皿を組む厨房はそのまま要るし、ホールには炭を替え、火を見て、火傷を防ぐ人が新たに付く。焼肉店がホール人員を厚く置く理由もそれ。減るのは人件費ではなく厨房が失敗する機会で、代わりに100席へ火を入れる排気設備が初期投資として先に出ていく。
最後の皿 · 店内で精米した米を釜で炊く。火で始まり火で終わる順序。©ダイヤモンドダイニング
最後の皿店内で精米した米を釜で炊く。火で始まり火で終わる順序。©ダイヤモンドダイニング
16.店を減らしてきた会社がオフィスビルの4階に100席を開き、焼く手を客席へ渡した対価としてチャージ600円を取る。その600円だけでも、ひと月集めればこの階の賃料に並ぶ計算になる。韓国で同じことをやろうとすると、引っかかるのはその600円だ。テーブル炉と排気フードは焼肉店のおかげですでにありふれた設備なので、むしろ安く付く。ただ炭代を別に請求した瞬間、チャージではなくぼったくりと受け取られる。焼く楽しさの代金をどこに隠すかが、先に解く問題になる。
野菜 · 焼く品目の半分は野菜。原価が低く、焼く時間は長い。©ダイヤモンドダイニング
野菜焼く品目の半分は野菜。原価が低く、焼く時間は長い。©ダイヤモンドダイニング
デイリーダイニング #021 · 2026.08.27 · Cash and Space
資料 · DDグループ プレスリリース「【飲食新業態】全テーブルに炉端を完備した新しい食体験空間が誕生。2026年8月26日(水)『炉端会席 KAKU 品川』グランドオープン」(2026.08) · DDグループ プレスリリース「【最大2,000円OFF】全卓に囲炉裏を備えた新しい食体験空間『炉端会席 KAKU 品川』、オープン記念のオールインクルーシブプランを特別価格6,500円〜で提供」(2026.08) · ダイヤモンドダイニング 公式ニュース「【NEW OPEN】全テーブルに炉端を完備した新しい食体験空間『炉端会席 KAKU 品川』が2026年8月26日(水)誕生」(2026.08) · 食べログ「炉端会席 KAKU 品川」店舗情報 · 三菱地所リアルエステートサービス「東京オフィスマーケット動向 空室率・平均募集賃料調査」(2026.03) · officee「品川区の賃貸オフィス賃料相場」(2026.06) · logmi Finance「DDグループ、連結で増収増益を達成」 · 日本経済新聞「DDグループの2026年2月期、純利益0.5%増」 · クックビズ総研 松村厚久 インタビュー · マネーフォワード クラウド「飲食店のFL比率とは」 · freee「飲食店の原価率の理想は」
330㎡と月商、客単価8,600円、チャージ合計は会社が公表した値ではなく、公開された価格表と席数、日本の外食業の平均比率から計算したもので、実際とは異なる場合がある。回転1.2回は飲み放題2.5時間と営業6時間を前提に置いた値。直営310店は2026年2月期第2四半期時点の開示に基づき、昼の営業は9月1日開始予定のため変わる可能性がある。