静岡・熱海の高台に建つ客室40室の温泉宿が、8月7日から6室を順次増やしている。2室にはバレルサウナ、2室には壁面投影の設備が入る。この建物にはすでに大浴場とサウナがある。
1.熱海風雅が客室を40室から46室にした。所在地は静岡県熱海市梅園町16-8、熱海駅からタクシーで1,500円ほどの坂の上。8月7日にシアタールーム付トリプル2室と和洋室ツイン2室が開き、8月14日にプライベートサウナ付ツイン2室が続く。開業記念料金は2名1室利用時の1名料金で20,625円から、一律25%オフだと運営会社は案内している。
2.運営はリロバケーションズ。2004年10月設立、資本金5,000万円、本社は東京都新宿区、代表取締役社長は田村佳克。Relo Hotels & Resortsの名で全国40か所を超える宿泊施設を運営する。親会社のリログループは東証プライム上場で、2026年3月期の売上収益は1,510億7,400万円、営業利益は308億1,500万円だった。
3.46室は8タイプに分かれる。いちばん小さい本館の和室ツインが22㎡、いちばん大きいシアタールーム付トリプルが46㎡。露天風呂付ツイン30㎡が7室、和洋室ツイン40㎡が6室、和室ツイン25㎡が14室、二間続きの和室36㎡が3室。今回増えた6室はすべて35㎡を超える。
4.プライベートサウナ付ツインは36.5㎡で定員3名。バレルサウナとジャグジー付きの内風呂が同じ部屋の中に入る。シアタールーム付トリプルは46㎡にセミダブル3台を置き、壁面に映像を投影する。和洋室ツインは40㎡に琉球畳の和室を併設した。3タイプとも一人客に向けた寸法ではない。


5.熱海の湯は塩化物・硫酸塩泉で、肌にやわらかくまとわりつく。大浴場は15時から翌1時まで、そして5時半から9時まで開く。夜11時の大浴場では湯の音よりガラス戸を引く音が大きく、サウナ室の扉から出る熱に木の匂いが混じる。部屋の中にサウナを入れれば、その音と匂いが廊下から客室へ移ってくるので、排気と給水は客室ごとに独立して立てる必要が出てくる。

6.この建物のサウナは男性専用だ。女性客に回るのは岩盤浴。熱い部屋に座ってから冷たい水に入るというあの順番を、女性客や家族・カップルはこの建物の中で使えなかったということであり、部屋にサウナを入れる判断はその空白を狙っている。

7.開業記念の25%オフが1名20,625円だから、定価は1名27,500円、2名1室なら1室55,000円になる。同じ建物の既存の低価格プランは1泊2食で1名10,000円から13,000円のあたりに置かれている。同じ温泉、同じ夕食ビュッフェ、部屋を替えただけで1名の料金が2倍を超える。
8.ホテルデータを集めるHotelBankの集計では、熱海市の旅館76軒2,508室の平均客室単価が59,300円、繁忙期の2025年8月には67,900円まで上がった。サウナ客室の55,000円は熱海の平均を下回る。高い部屋を新たに建てたというより、安い宿がはじめて平均に近い部屋を持ったという話に近い。

9.客室サウナが値段をどれだけ押し上げるかは、すでに測った人がいる。メトロエンジンが集めた公開販売価格をHotelBankが2017年1月から2026年6月まで7,121施設分で処理したところ、同一ホテル内でサウナ付き客室が平均47%、中央値32%高く売れていた。55,000円に中央値を逆算すると、サウナがない場合の値が41,700円、プレミアムが13,300円ほど。
10.稼働率70%を入れると年255泊で、プレミアムだけで339万円が積み上がる。バレルサウナの導入費は日本では本体150万から300万円、屋内設置と消防対応まで含めて100万から150万円が上乗せされるのが通例だ。1室あたり250万から450万円。その額なら回収は9か月から16か月で、稼働率が50%に落ちても2年を超えない。
11.宿全体に広げてみる。46室に客室単価35,000円、稼働率75%を入れると年間売上は4億4,000万円、韓国の通貨で41億ウォンあたり。今回増えた6室は価格が上のほうなので50,000円で置くと8,200万円、7億7,000万ウォンをつくる。室数では13%の6室が売上の19%を持っていく。料金表が全面的に公開されてはいないため、単価はこの記事の推定。

12.部屋を埋める経路がふつうの宿と違う。ひとつめが会員権で、ポイントを買って全国の施設を生涯使う仕組みであり、初年度に2,199,200円、翌年から年会費99,000円を払う。会員が実際に泊まるときに払う額は4~5名利用で1室8,000円から。ふたつめがグループの本業である福利厚生代行で、リロクラブが25,800社・団体と契約して会員1,340万人を抱えており、その会員が優待価格で入ってくる。みっつめが一般の予約サイト。
13.シティホテルが宴会場と結婚式で稼いでいた場所を、この会社は会員権の前受金と法人契約で埋める。46室の施設が予約サイトの順位に必死にならなくていい理由がここにあり、その代わり会員がまた来ないと事業が回らない。生涯使える会員権を売った会社は同じ客を10年、20年相手にするので、部屋が毎回同じなら会員権の値打ちがひとりでに削られていく。

14.つまりこの6室は供給を増やす工事ではなく、すでに囲い込んだ客に新しい理由を売る工事だ。サウナのある部屋、映画を見られる部屋、畳を敷いた部屋。3つとも再訪したときに「今度はあの部屋」と言わせるための仕掛けであり、館内のサウナが男性専用だったために半分が使えなかった体験を部屋単位で売り直している。

15.市場が支えたのも事実である。熱海市の2025年度の宿泊者は入湯税ベースで319万9,457人、前年より4.2%増えて2001年度以降で最も高く、同じ年に全国の宿泊者が1.8%減ったのとは方向が分かれた。2025年度だけでこの市に新しく入った客室は350室を超えると観光局は集計している。押し寄せる客を前に部屋を増やすところがいくつもあるということなので、遅れて増やす側は他がやらない部屋をつくるしかない。

16.運営会社は新客室の画像にAI生成・加工が含まれるとリリースに書いている。まだ開いていない部屋を、つくり出した絵で売り、そこに25%オフを付けて先に予約を取る。実物が絵と食い違ったとき、その不満がいちばん高くつくのが会員制の事業である。
結びに
客室40室の温泉宿が6室を増やし、そのすべてを35㎡超の広い部屋で埋め、うち2室には館内にすでにあるのと同じサウナを部屋の中にもう一度入れた。値段は1名27,500円で既存の低価格プランの2倍を超え、サウナのプレミアムだけを取り出して計算すると設備費250万~450万円が1年前後で戻る。韓国で同じことをやるなら、まず保健所の前に立つ。公衆衛生管理法が浴場業の施設基準として浴室・脱衣室・発汗室を分け、男女の区分まで求めており、客室の中に発汗設備を入れる行為が宿泊業の客室設備なのか別途届出の対象なのかは自治体によって判断が分かれる。ここに電気サウナの容量増設と防火・排気の計画が付いてくるので、図面より先に所轄の保健所と消防署に会うほうが早い。
