ポルトガルの田舎、かつての農地に客室16のホテルが9月に開いた。料金一つに1日3食と飲み物、1日2回のプログラムがすべて含まれる。客が半分しか来なくても、料理人もヨガ講師も同じように出勤する造りだ。
1.リスボンとポルトのちょうど中間、レイリア(Leiria)地区のLage村。住所はBeco Tropical 5番地。9月、Quinta Filippaがここで静かに開業した。客室とスイートを合わせて16。マイク・シュヴァルバッハ(Mike Schwalbach)とニッキー・モル(Nikki Mol)夫妻が2017年にこの土地を見つけ、9年かけて直した。ホテルの名は夫妻の長女の名から取っている。
2.もとは農地で、かつて村の人々がパンを焼いた場所もあった。敷地は資料によって35ヘクタールと40ヘクタールに分かれるが、低いほうを取っても10万坪を超える。その土地に客室は16しか置かなかった。建物の修復はポルトガルのスタジオArquiprivéeが、内装はCircle Studioが夫妻とともに手がけた。

3.直し方は足すより引くほうだった。垂木は皮も剥かない丸太のまま見えているし、煉瓦の壁は漆喰を塗らず黄色い土の色がそのまま出ている。床は焼き物のタイルと濃い無垢材が場所ごとに切り替わる。新しく入れた物は手びねりの陶器とラタンの笠の照明くらい。古い農家の建物を何棟かつないで使っているので天井高も仕上げも棟ごとに違うのだが、その違いを隠していない。

4.客室は広い。いちばん小さいGarden Roomが40㎡、Olive Suiteは53㎡。都心のブティックホテルの1室がふつう20〜28㎡なのを思えば倍近い。ただ、もっと目につくのはタイプの数のほうだ。Garden Room・Garden Suite・Olive Suite・Pool Suite・Courtyard Room・Courtyard Suite・Courtyard Fireplace Room・Filippa Suite。客室16に名前が8つだから、1タイプあたり平均2室しか回らない。


5.8つに分かれた理由は、建物がもともとそうだったからだ。暖炉のある部屋は暖炉があるから名がつき、オリーブの木の間に座る部屋はその木のせいで名がついた。ない規則を作ったのではなく、あった違いを売ることにしたということ。部屋ごとに屋外の席が付き、浴室には植物を植えた壁が入る。

6.ウェルネス側は規模が違う。25mの加温塩水プール、赤外線サウナ、スチームルーム、氷風呂、自然の池、ヨガデッキとスタジオ、ジム、ピラティスの場所が別にある。客室16の宿が持つには多すぎる一覧だ。日が傾くころヨガデッキに立つと、板が昼のあいだ溜めた熱を足裏へ返してくる。耳に残るのはオリーブの葉が擦れる音だけ。

7.料金は公開していない。ただ、料金に何が入るかは示してある。朝食・昼食・夕食と飲み物、1日2回のグループプログラム、ウェルネス施設の全利用。ハイキング・自転車・ピラティス・パーソナルトレーニング・農場見学・創作の時間がそこに入る。客が財布を開くのは到着のとき一度きりで、滞在中は金を使う場面がない。
8.だから似た宿の値から逆算するしかない。ポルトガルの田舎ラグジュアリーの基準点であるSão Lourenço do Barrocalが、朝食だけ付けて1泊およそ490ユーロから。ポルトガルのウェルネス宿はトリートメントと食事を入れて1泊200〜600ユーロの線。ここは3食とプログラムが全部入るので、2名で1日120〜140ユーロ分が部屋代の上に乗ると見るべきだ。開業初年のプレミアムも足して1泊600ユーロと置く(推定)。

9.16の客室を1年を通して半分埋めると置こう。ポルトガル全国平均の稼働率が62〜63%だが、田舎は冬がまるごと抜けるうえ開業初年なので、それより下げた値だ。すると年に売る部屋が2,920、売上は175万ユーロになる(推定)。1ユーロ1,600ウォンなら28億ウォン、1室が1年で1億7,500万ウォンを生む。
10.問題は、その売上を作る人の数だ。1日2回プログラムを回して3食を出すには、厨房とサービス、客室整備、ウェルネス講師、農場と庭、保守、予約まで26人ほどが要る(推定)。ポルトガルの最低賃金は2026年で月920ユーロ、年に14回払う。ホテル業の平均を月1,200ユーロと置き、使用者の社会保障23.75%を乗せると人件費だけで54万ユーロ、売上の31%。
11.ここまではただの高いホテル。本当に分かれるのは客が減るときだ。都心のホテルは部屋が空けば、その部屋に入る金も一緒に出ていかない。ここでは客が何人来ようとシェフもヨガ講師も同じように出勤する。26人のうち客数に応じて減らせる席は多くて5、6。稼働率が50%から40%へ10ポイント下がると売上は35万ユーロ抜けるのに、削れる原価は13万ユーロを超えにくい。残る金が3分の1以上消える。
12.流通もふつうのホテルと違う。客室16にタイプが8つだと1タイプの在庫が2しかなく、料金を日ごとに動かすレベニューマネジメントの回る余地がない。チャネルをいくつも開けば同じタイプが二か所で同時に売れる事故が起きる。そこで自社の予約ページと電話1本で受け、敷地をまるごと貸す商品を別に用意した。16を一度に売る契約一つが、2か月分の予約より安全だ。

13.人がこの値を払う理由は、選ぶことから解放されるからだという。どこで何を食べるか、今日何をするかを決めなくても1日が回る。都市のホテルが売るのは寝床と立地だが、ここが売るのは決めなくていい3日間。星付きホテルならこの金はレストラン売上とスパ売上、宴会売上に分かれて入ってきたはずだが、ここでは全部が部屋代一行で入る。帳簿には客室売上と載るのに、原価は厨房と講師へ出ていく。

14.南のアレンテージョに先を行く手本がある。São Lourenço do Barrocalは200年以上一つの家が持つ780ヘクタールの農場に客室22とスイート2、コテージ16を置き、ワイナリーとレストラン2軒、農場の店を別に回す。朝食だけ付けて1泊490ユーロから取り、残りは客が使った分だけ計算する。どちらがよいかは稼働率が決める。客が埋まれば別売りのほうが稼ぎ、空く年は料金に全部入れたほうが先に折れる。

15.危うさは季節と人のほう。リスボンからでもポルトからでも車で1時間半かかる場所なので閑散期に自力で客を引く力が弱く、冬も25mプールは温めねばならない。プログラムの値打ちは講師一人の腕にかかっているが、人口の少ない田舎でその人を引き留めるのは容易でない。客室を増やして固定費を分ける道もふさがっている。客室を増やした瞬間、客32人で分けていた35ヘクタールがもっと細かく割られるからだ。
ポルトガルの田舎、かつての農地35ヘクタールに客室16のホテルが9月に開き、料金一つに3食と飲み物、1日2回のプログラムがすべて入る。1泊600ユーロ・稼働率50%と置けば年の売上は175万ユーロだが人件費がその31%を持っていき、稼働率が10ポイント下がるだけで残る金は3分の1以上抜ける(推定)。韓国で同じことをやろうとすると、まず規模で引っかかる。農漁村民宿は住宅の延べ面積230㎡未満なので客室16がそもそも入らず、観光農園も10万㎡未満に縛られていて35ヘクタールを収められない。結局は農地か山林を転用して一般宿泊業か観光宿泊業へ行くしかなく、客に1日3食を出すには食品衛生法上の飲食店営業申告を別に受ける必要がある。
