香港・銅鑼灣の百德新街にあるFashion Walk。H&Mが2013年に月額1,000万香港ドルで借り、アジア最大の店舗と称した4フロアが、2月21日に閉店した。その区画は三つに分割され、うち3フロア3万平方フィートを中国のW.MANAGEMENTが取った。月額賃料は200万香港ドル余り。杭州で始まり、まだ4年目の会社である。
1.契約が伝えられたのは8月25日。3万平方フィート、2,787平方メートルを地上3フロアに分けて使う。H&Mが使っていた4フロア4.6万平方フィートの3分の2ほどの広さだ。
2.建物は恒隆地産が所有する恒隆中心。H&Mは2013年に地下から3階までを一括で借り、アジア最大の店舗だと発表した。当時の月額賃料が1,000万香港ドル。契約終了の頃には400万を下回っていたと現地の不動産メディアは伝える。同じ月に九龍のFestival Walk店も閉め、かつて13店あった香港の店舗は荃灣の1店だけになった。

3.空いた区画は一つのまま次に渡らなかった。路面の1万平方フィートは龍豐集團が薬局として月120万香港ドルで取り、残るフロアは飲食が一部を埋めた。一塊では動かず、三つに切った。香港の路面で4.6万平方フィートを一度に消化できる借主が今どこにいるだろうか。

4.W.MANAGEMENTは杭州に本社を置き、寧波の喻義集團の傘下にある。会社資料は2022年の立ち上げと記し、中国メディアの多くは2023年の1号店を挙げる。2年で29都市に41店舗。大半が1,000平方メートルを超え、上海・南京東路の旗艦店は香港に出す店舗と同じ3万平方フィートだ。

5.店内は華やかなレトロ寄りに作る。灰色モルタルの壁に黒いWMの銘板を付け、フロアをつなぐ階段には鋳鉄の装飾手すりを回し、燭台の形をした照明を掛けた。シャンデリアが天井から下がるフロアもある。試着室のカーテンはベルベットの緑に替え、照明は明るさを調節できるようにした。中で撮った写真に補正が要らないようにするためだ。

6.売るのは婦人服が中心で、紳士服とバッグ・帽子・靴下・アクセサリーが付く。値段は100元台から300元台。日本円ならおおむね2,000円から6,000円の帯に収まる。アメリカのレトロにストリートを混ぜた服で、Brandy Melvilleの代わりと呼ばれるが、当の会社は服より店を前に出す。

7.従業員を採る場面から話題になった。南京1号店を開けるとき、応募者がピンクの紙袋を一つずつ持って通路に並び、その列がそのままコンテンツになった。1店舗に60人ほどを置き、うち70%が有期契約。時給は平日50元、週末70元。

8.一部の店舗は従業員の30%をモデルで埋める。男性180センチ、女性170センチが平均身長だと中国の流通メディアは記す。正社員の月給が1万元を超え、本土の販売職の相場より明らかに高いが、会社が買っているのは接客の技術ではなく、客が店内で撮って上げる一場面だ。

9.「店長が着ている服」という棚を500着限定で並べ、一日店長を立てた日、その店舗の売上が82万元まで上がった。普段の週末の3.4倍。服を売る催しではなく人を見に来させる催しで、売り切れたら補充しない。

10.商品の作り方は三つに分けてある。他社の在庫30%、ODM30%、自社企画30%。一着の開発に20日かかり、原価はZaraより20%ほど低いと言われる。一品目の初回発注が500着で、売れたら下げて二度と作らない。週に150型が新しく掛かる。
11.本土の店舗1店の月次の数字が中国の流通メディアに公開されたことがある。1,000平方メートル基準で売上800万元、賃料36万、人件費35万、内装の減価8万。粗利率55%に純利率18%が残り、投資は14か月で回収される。1店舗が年に3億3,000万円ほど稼ぐ計算になる。
12.この公式をそのまま香港に載せるとどうなるか。本土の賃料は1平方メートル当たり1日12元。香港の月額200万香港ドルを2,787平方メートルで割ると1日22元。地価が1.8倍高い場所に、面積は2.8倍のものを持って入る。
13.本土と同じく1平方メートル当たり月8,000元を売ると置けば、香港店舗の賃料比率は8.2%になる。純利率18%から3.7ポイント削られる程度で、まだ持ちこたえる。問題は上海の旗艦店を基準に計算するとき。あの店舗の年商1億5,000万元を同じ広さで割ると1平方メートル当たり月4,485元で、この水準だと賃料が売上の14.7%を食う。
14.香港の小売は今、持ち直している最中だ。5月まで13か月連続で売上が伸び、累計1,715億香港ドル、1年前より10.6%上。銅鑼灣と中環の路面空室率は2四半期続けて0。ブランドが再び入ってくるのに場所がなく、一級路面の賃料が今年5%から10%まで上がると不動産アドバイザーは見る。

15.持ち直す市場でH&Mが出て、その場所を中国ブランドが取った。香港の人のカード決済のうち3分の1がすでに境界の外で起きている。深圳に渡って買っていたその服を銅鑼灣で売るという計算。会社はマカオ・バンコク・シンガポール・東京にも場所を押さえてある。投資家と交わした初期の話し合いで20億から30億ドルの間の値が挙がったと伝えられる。

16.2,787平方メートルに月3,500万円を払う店舗が本土の公式どおりに残そうとするなら、1平方メートル当たりの売上が本土平均の1.8倍でなければならない。ところがこの会社が売るのは原価を下げた服ではなく写真に撮られる店で、それは人件費と内装に金を焼き続けないと保たない。この会社で金がより出ていくのは、賃料ではなく店を写真に撮られ続ける状態に保つ費用だ。主要な商業地の路面で2,787平方メートルなら、保証金と権利金を別にしても賃料だけで月1,000万円台から始まるのに、その店を埋める服は100元台では作れない。関税と物流を乗せた輸入原価に現地の販売職の人件費を足せば値段は倍になり、倍になった瞬間に列を作らせていた理由が消える。
