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7月16日に開いたJAPAN EDITION銀座店。庇の下のベンチと開いた開口部の向こうに地上階がそのまま見える (ⓒTOKYO BASE)
7月16日に開いたJAPAN EDITION銀座店。庇の下のベンチと開いた開口部の向こうに地上階がそのまま見える (ⓒTOKYO BASE)
デイリー スペース

銀座並木通りのJAPAN EDITION、上は光のショールーム下は影の蔵

2026.07.18

東京でいちばん賃料の高い高級ブランド通り。Louis VuittonとTiffanyが並ぶその一角の真ん中に、ある日本企業が自国の地方職人がつくった服を掛けた。階段を下りると、売り場ではなく昔の蔵が出てくる。

1.7月16日、東京・銀座の並木通りに店舗がひとつ開いた。名前はJAPAN EDITION。日本の上場アパレル企業TOKYO BASEが出したフラッグシップで、日本各地の職人と伝統技法、地域の手仕事を現代的にキュレーションしたセレクトショップだ。会社のモットーは露骨である。「FROM JAPAN TO THE WORLD」。
2.場所がすべてだ。並木通りはLouis Vuitton、Tiffany、Grand Seiko、Omega、Harry Winstonが並ぶ東京最高価格の高級ブランド通りで、その間に自国産デニムブランドが一区画を差し込んだ。
並木通りに立つLouis Vuittonの店舗。ガラスのファサードが空を波のように映す (ⓒVOGUE JAPAN·Daici Ano)
並木通りに立つLouis Vuittonの店舗。ガラスのファサードが空を波のように映す (ⓒVOGUE JAPAN·Daici Ano)
並木通りの街路表示 (ⓒUrban Life Tokyo)
並木通りの街路表示 (ⓒUrban Life Tokyo)
3.正確な面積は公開されていない。構造は地上1階に地下1階を付けたスプリットレベルで、並木通りの区画の性質上、大型店舗ではない(推定)。設計はKAMIYA ARCHITECTSの神谷修平。
4.外観からして異質だ。デニムブルーの瓦屋根が庇を低く押さえ、その庇に沿って紙の提灯が一列に掛かって揺れる。ガラスと大理石で塗り固めた通りで、この一間だけが光を返さない。
自国の地方職人の服をキュレーションしたJAPAN EDITIONの店内 (ⓒHypebeast)
自国の地方職人の服をキュレーションしたJAPAN EDITIONの店内 (ⓒHypebeast)
5.地上階は光。光で動線を引くように組んだ明るいショールームで、新作とコラボを明るく敷いて見せる階。地下階は影。伝統のを再現し、暖かい照明と陰で暗く押さえてある。明るい売り場ではなく、物を寝かせておく蔵の感覚だ。
地上階。コンクリートの床と現しの天井の下、右手の赤い格子棚に盆栽と陶の人形を載せた (ⓒWWDJAPAN)
地上階。コンクリートの床と現しの天井の下、右手の赤い格子棚に盆栽と陶の人形を載せた (ⓒWWDJAPAN)
地下階。木の梁を格子に組んで下ろし、階段状の什器にデニムを積んだ (ⓒWWDJAPAN)
地下階。木の梁を格子に組んで下ろし、階段状の什器にデニムを積んだ (ⓒWWDJAPAN)
6.物語を垂直に立てた。上は光、下は影。客が階段を下りるあいだに「新作」が「遺産」に変わり、同じ服を二つの温度で二度売る。

地上 · 光 · ショールーム · 商品を見せる階

地下 · 影 · 蔵 · 物語を売る階

7.原産地の表記が変わっている。この会社は自社製の服の原産地を「国」ではなく「」で打つ。Made in Japanではなく、どの都道府県でつくったかをタグに入れる。
8.安い通りでもないところで、自国産デニムがフランスの高級ブランドの隣に立つとなぜ売れるのか。突いているのは「国産=高級」という自国のプライドだ。地方職人の手を輸入ブランドと同じ通り、同じ目線に立たせること。その配置そのものが「うちのものはあれと並んで立つ資格がある」という一文になる。
地下の什器の横に置かれた旧型の工業用ミシンと糸巻き (ⓒWWDJAPAN)
地下の什器の横に置かれた旧型の工業用ミシンと糸巻き (ⓒWWDJAPAN)
9.ここにプロヴナンス(原産地)のプレミアムを重ねた。誰がどこでつくったのか誰も知らない匿名生産の時代に、その疲れの反対側で「このデニムはどの県のどの工場で」を売る。県単位のタグがその証で、追跡できることがそのまま贅沢になった。
10.地下の蔵がその感情を打ち込む。売り場ではなく蔵へ下りるというのは、保管され熟成した貴いものを取り出して買う感覚だから、物ではなく「古さ」と「根」を売る舞台装置になる。
11.突然出てきた流れではない。銀座は明治以来、日本のショーケース通りで、近代最初の西洋式商店街であり、いまはアジアの高級ブランドの陳列窓だ。ここに場所を取る行為そのものが「国の代表・プレミアム」の宣言だという文法は、100年以上続いてきた。
TOKYO BASEが育てたPUBLIC TOKYOの神宮前フラッグシップ (ⓒHypebeast)
TOKYO BASEが育てたPUBLIC TOKYOの神宮前フラッグシップ (ⓒHypebeast)
12.会社が歩いてきた道も一貫している。TOKYO BASEは2008年にSTUDIOUSで始まり、UNITED TOKYOとPUBLIC TOKYOを育てた。これらのブランドは全量日本国内生産を原則として高マージンを取る。JAPAN EDITIONはその路線の頂点。
岡山の旧型力織機。セルビッジデニムはこの遅い機械から出てくる (ⓒMOLTEMANI)
岡山の旧型力織機。セルビッジデニムはこの遅い機械から出てくる (ⓒMOLTEMANI)
13.「メイド・イン・ジャパン=高級」という流れはもっと長い。セルビッジデニムの復興を率いたEVISUと創業者の山根英彦、そしてvisvimとKAPITAL。日本の職人デニムはすでに世界でプレミアムとして売れている。今回のオープンのコラボがデニムの名門YAMANE INDUSTRIESと組んだのも、その流れを呼び込む装置だ。専用のデニムジャケットとストレートジーンズ、アセテートのスカジャンまで。
オープンに合わせてYAMANE INDUSTRIESと出したデニムジャケット (ⓒTOKYO BASE)
オープンに合わせてYAMANE INDUSTRIESと出したデニムジャケット (ⓒTOKYO BASE)
14.100%国内生産は原価が高く、人件費の安い海外へも出ていかないのに、この会社はむしろ高マージンを守る。仕掛けは卸の割引流通に乗らないこと。直営・定価だけで売り、セールで崩れるマージンの区間をはじめから消した。県のタグもここから見直すと原価0で値を上げる装置で、地方の名前を一行足すのにかかる金はなく、認識される価値は上がる。
15.このフラッグシップはもともと賃料で稼ぐ店舗ではない。並木通りの1階路面は坪当たり月20万円前後で動くというのが業界の推定で、ここにアパレル小売がよく置く賃料比率12%を当てはめると、この小さな二層が年に数十億ウォン台の売上を出してようやく釣り合う。アジア最高価格の通りの家賃を店舗売上で回収する計算は、はじめから立たない。
16.これはアンテナ(輸出のショーケース)だ。銀座はアジアでもっとも多く撮影される買い物通りなので、世界中の観光客が撮って上げる。その瞬間、店舗は無料のグローバルPR装置になる。売っているのは服ではなく「メイド・イン・ジャパン」という物語で、実際の金は中国・アメリカの展開と全店舗・オンラインで稼ぐ。この二層がやっているのは販売ではなく、国のブランドの広告。

7月16日、銀座の並木通りに上場アパレル企業TOKYO BASEの自国工芸セレクトショップJAPAN EDITIONが開いた。地上は光のショールーム、地下は影の蔵に組み、階段ひとつを挟んで同じ服を二度売る。残る数字は賃料の売上比12%で、その比率をこの二層に当てはめた瞬間、店舗の損益では答えが出ない。そこでようやく、この場所が売上ではなく露出を買う場所だと見えてくる。移そうとする人が止まるのも正確にそこだ。最高立地のフラッグシップのP&Lを坪当たり売上で採点すれば必ず赤字で出るので、露出とコンテンツ、物語の輸出を別の損益で立て、回収はオンラインと後続店舗でするように最初から設計しなければならない。その会計を取り違えた小さなブランドは、アンテナショップひとつに会社を食われる。原産地を国ではなく町まで狭めるタグの一行は原価が0だが、その一行が値を立てるのは、上下で温度の分かれる舞台が先に立っているときだけ。