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川側から見たTIME'S · 左が高瀬川。建物が水辺へ下りていく。ⓒRaphael Azevedo Franca
川側から見たTIME'S左が高瀬川。建物が水辺へ下りていく。ⓒRaphael Azevedo Franca
デイリー スペース

45分2,000円の商品を売るために、安藤忠雄の建物の1階を借りた(京都・再生建築)

2026.08.29

1984年に建ったコンクリートブロックの建物が、長らく閉じたままだった。8月5日、その1階に建築センターが入った。売るのは建物ではなく、建物を読み解く45分だ。

1.京都建築センターが8月5日にオープンした。場所は京都市中京区三条通中島町92、TIME'Sの路面フロア。この日始まったのは建築ツアーの受付とショップの営業で、ギャラリーとライブラリーを含む全体は9月2日に開く。運営は合同会社まいまい。
2.まず建物から。TIME'Sは安藤忠雄建築研究所の設計で、1期が1984年、2期が1991年に加わった。敷地473.80㎡に延床834.20㎡、地上3階地下1階。素材は化粧コンクリートブロックと鉄筋コンクリート。バブル期にはKENZOのような名前が三条通側のショーウィンドーを埋め、その後テナントが抜けてしばらく閉じていた。
空いていたあいだ · 写真祭KYOTOGRAPHIEのサテライトKG+が会場として使っていた頃。ⓒhetgallery
空いていたあいだ写真祭KYOTOGRAPHIEのサテライトKG+が会場として使っていた頃。ⓒhetgallery
3.この建物の変わっているところは、正面ではなく背後にある。高瀬川に背を向けず、川へ下りていく。通りから階段を下りると水面とほぼ同じ高さの通路が現れ、そこから回廊と橋を伝って2階へ上がる。客を水辺まで連れて下り、また上げる商業建築。
水路に沿って座る · 敷地が川沿いに細長い。曲面屋根は2期の増築分。ⓒhetgallery
水路に沿って座る敷地が川沿いに細長い。曲面屋根は2期の増築分。ⓒhetgallery
水面に接する通路 · 水辺から階段を踏んで建物に入る。ⓒhetgallery
水面に接する通路水辺から階段を踏んで建物に入る。ⓒhetgallery
4.ブロックは一段一段が見えるように積まれ、42年分の雨だれが目地を伝って流れている。水音が絶えず、柳の影が壁で揺れる。ガラス天窓の下の中庭では、上階バルコニーの床がそのまま天井になる。ただしこの動線は商売に不利だ。賃貸区画が細かく割れ、階ごとに上り下りがつく。
天窓の下の中庭 · ブロック壁とガラス屋根が出会う場所。ⓒhetgallery
天窓の下の中庭ブロック壁とガラス屋根が出会う場所。ⓒhetgallery
半分は外の通路 · どの区画もこうした通路を抜けて入る。ⓒhetgallery
半分は外の通路どの区画もこうした通路を抜けて入る。ⓒhetgallery
5.1階の改修はMIDW architects(服部大祐+服部さおり)とstudio arche(甲斐貴大)が担当した。もとの壁であるコンクリートブロックはそのまま残し、受付カウンター、ショップ什器、ライブラリー什器、ラウンジベンチまで同じブロックで積んでつくっている。新しく入れた材料がほとんどない。
1階の計画 · 本棚、ライブラリー什器、ラウンジベンチ、受付カウンター、ショップ什器の順に表記されている。ⓒMIDW architects・studio arche
1階の計画本棚、ライブラリー什器、ラウンジベンチ、受付カウンター、ショップ什器の順に表記されている。ⓒMIDW architects・studio arche
什器も同じブロック · 売り台とカウンターを壁と同じ材でつくった。ⓒMIDW architects・studio arche
什器も同じブロック売り台とカウンターを壁と同じ材でつくった。ⓒMIDW architects・studio arche
6.有名な建物がなぜ空いたのか。観光客は写真を撮って去り、ものは買わない。建物の名前は来訪者数を増やすが、テナントの売上まではなかなか届かない。ところが賃料は名前に先に追いつく。賃料が上がり、上がった賃料にテナントが耐えられない。
通りから見えるもの · 右の壁がTIME'S。橋の高さが道路面だ。ⓒそらみみ・CC BY-SA 3.0
通りから見えるもの右の壁がTIME'S。橋の高さが道路面だ。ⓒそらみみ・CC BY-SA 3.0
7.まいまいが売っているのは建物ではなく解説。2011年3月に始まり、登録ガイドは400人を超え、ツアーを年に2,000本以上回す。TIME'Sを巡る商品は45分で2,000円、定員10名。普段は入れない区域まで入れて1階から3階まで見る。
8.だからセンターは目的地というより改札口に近い。売る商品は京都という都市そのもので、この施設は切符を買って出発する場と、終えて本を買う場を受け持つ。面積が小さくてよい理由がここにある。展示室を大きくつくらねばならない美術館とは原価構造が正反対
한 사람에게 받는 값 건축투어와 건축제 이용권 요금 · 공식 발표 기준 TIME'S 건축투어 45분 · 정원 10명 2,000엔 교토모던건축제 29세 이하 통기권 2,000엔 교토모던건축제 전기·후기권 3,000엔 교토모던건축제 통기권 5,000엔 조기 구매는 200엔씩 싸다. 통기권 4,800엔, 전기·후기권 2,800엔, 29세 이하 1,800엔
図表の読み方黒い棒2本が、センターが通年で売る値段と、祭りの繁忙期に受け取る値段。
9.立ち上げにかかった費用が約1,600万円。内装設計と施工、展示空間とライブラリーの設置、サインや案内の整備までがここに入る。7月11日に始まったクラウドファンディングは目標400万円で、8月28日時点で513万円が集まった。支援者は246人、1人平均およそ20,900円。残りは地元信用金庫が確保した融資枠で埋める。
10.賃料は公開されていない。京都都心の路面1階の相場である坪あたり月2万〜3万円台をあて、30坪ほどを使うとみれば月60万〜90万円あたりになる(以下は推定)。ツアー1本の売上が2万円で、ガイド謝礼と決済手数料に半分が出るとすれば、賃料だけでみた損益分岐は月75本。1日2〜3本。45分の商品なので1日4本も回る。
11.祭りが繁忙期をつくる。京都モダン建築祭は今年10月31日から11月8日まで開き、パスポートで見られる建築が61件。同じ会社が関わる東京建築祭は2026年の参加建築が151件、2025年の来場が11万人を超えた。祭りは年に数日、センターは365日開く。切符売り場が常に開いていれば、祭り以外の11か月にも人がつく。
6년 사이에 무엇이 달라졌나 같은 회사의 두 차례 모금 · 2026년분은 8월 28일 시점 2020년 5월 · 존속 지원 모금 978만 엔 · 1,026명 목표 200만 엔 · 1인 평균 약 9,500엔 2026년 8월 · 센터 개설 모금 513만 엔 · 246명 목표 400만 엔 · 1인 평균 약 20,900엔 모인 돈은 절반, 1인이 낸 돈은 2.2배 2020년은 회사를 살려 달라는 모금이었고, 2026년은 점포를 내겠다는 모금이다 2020년 당시 예상 손실은 4월 약 200만 엔, 5월 약 300만 엔 2026년 모금은 9월 15일까지 열려 있어 최종 금액은 더 오를 수 있다
図表の読み方棒の長さは集まった金額。人数は4分の1に減った。
12.都市の建物を一斉に開いて見せるやり方は、1992年にロンドンで始まったOpen Houseが原型。京都は2022年に文化庁移転記念事業として祭りを始め、実行委員会と京都市が共催している。その祭りが4年で、通年開く店舗を一つ手に入れた。
センターがつくるコンテンツ · 建築家ごとに本棚を紹介する企画「建築家の本棚」。ⓒ京都建築センター
センターがつくるコンテンツ建築家ごとに本棚を紹介する企画「建築家の本棚」。ⓒ京都建築センター
13.ただしこの会社は6年前に死にかけている。2020年春にツアーが全部止まり、4月に約200万円、5月に約300万円の損失が見込まれ、目標200万円の募集に978万円が入って生き延びた。ツアー業には在庫がないので、人が来ない日は売上がそのままゼロ。店舗はそういう事業に固定費を足す選択。観光客が途絶えても賃料は出ていく。
14.テナントが抜けて閉じていた築42年の建物の1階を、ツアー会社が1,600万円かけて自分の窓口に変えた。韓国で同じことをやろうとすると、金より資格で先につまずく。有料の徒歩解説を商品として売った瞬間、観光振興法上の旅行業登録の対象かどうかが問題になり、判断が自治体ごとに割れる。他人の建物の内部を商品に入れるには、所有者の同意と来訪者の傷害保険が毎回別につく。45分2,000円は、その書類代まで乗せてなお残らねばならない値段だ。
参考:合同会社まいまい プレスリリース2026年7月「国内初の建築ツーリズム拠点 京都建築センター開設」(PR TIMES)・TECTURE MAG 2026年7月15日「安藤忠雄建築〈TIME'S〉に都市型建築文化拠点を」・ADF Web Magazine 2026年「安藤忠雄設計 TIME'S に国内初の建築ツーリズム拠点」・MotionGallery「日本初、都市の中心で建築文化を発信する京都建築センター実現に向けて」・MotionGallery「SAVE THE まいまい京都」(2020年)・京都モダン建築祭 公式サイト パスポートページ・建築ツーリズムセンター ツアー案内ページ・hetgallery「TIME'S」写真資料。確認した値は次のとおり。京都建築センター プレオープン2026年8月5日・全体開館9月2日、住所は京都市中京区三条通河原町東入中島町92 TIME'S 路面フロア、運営は合同会社まいまい(代表 以倉敬之)、空間設計はMIDW architects(服部大祐・服部さおり)とstudio arche(甲斐貴大)、事業は建築ツアーの企画と実施・展示・建築書ライブラリー・ショップ・ガイド養成講座・講演会、TIME'Sは安藤忠雄建築研究所の設計で1期1984年・2期1991年竣工、敷地473.80㎡・延床834.20㎡・地上3階地下1階・コンクリートブロックと鉄筋コンクリート、TIME'S建築ツアーは45分・2,000円・定員10名、まいまいは2011年3月創業・登録ガイド400人以上・年間ツアー2,000本以上、開設の募集は目標400万円・2026年8月28日時点で5,130,000円・246人・期間は7月11日から9月15日まで、総開設費用は約1,600万円、2020年の募集は目標200万円・最終9,783,278円・1,026人・4月約200万円と5月約300万円の損失見込み、京都モダン建築祭は2022年開始・2026年は10月31日から11月8日まで・パスポート公開61件(前期32件・後期29件)・通期パス5,000円と早割4,800円・前期後期パス各3,000円と早割2,800円・29歳以下2,000円と早割1,800円、東京建築祭は2026年の参加建築151件・2025年の来場11万人以上。賃料の坪あたり月2万〜3万円台と月60万〜90万円、使用面積30坪、ツアー1本あたりの手残り1万円、損益分岐の月75本は、公開相場と公表料金から計算してみた値であり、事業主体の発表値ではない。実際の賃貸条件やツアー原価、来訪者数は公開されていない。旅行業登録と保険に関する記述は一般的な基準をまとめたもので、個別の事業は所管自治体の判断で分かれる。写真ⓒ各著作者(キャプション表記)。個人閲覧用に出典を示して引用した。