先月7日、3,572㎡の市立公園がひとつ生まれ変わった。広場が5つ、226mの立体園路、樹木160本ほど。園内には鉄骨4階建ての建物が立ち、その3階と4階はサウナである。市が公募で示した負担上限は4,660万円だった。
1.2026年8月7日、福岡市博多区の明治公園が再び開園した。JR博多駅から徒歩4分、敷地は約3,572㎡。開園は1965年で、当時この一帯は田んぼと湿地だったという。
2.以後、この土地は長く掘り返されたままだった。2008年からは浸水対策工事、地下送電管路工事、駅前広場地下駐車場工事が順に敷地を占用し、2011年に再整備へ入って2015年には一部だけが供用された。完成した姿が出るまで15年。
建った後同じ場所を竣工直後に撮った写真。芝はまだ育ちきっていない。ⓒ東京建物
3.新しく立ったものは2つ。鉄骨地上4階・延床約1,588㎡の店舗棟と、その建物と芝生広場を巻いて回る全長226mの立体園路である。総合デザイン監修は藤本壮介、設計は梓設計、施工は旭工務店。
置かれた場所赤い枠が事業対象地。右がJR博多駅で、上には「東京建物博多ビル」も記されている。ⓒ東京建物
4.緑化面積は約1,400㎡、敷地の39%にあたる。植えた樹木は在来種で160本ほど。残りに広場が5つ散らばり、名前はすべて「にわ」で終わる。中央の芝生が野々にわ、段状に座れる場所が縁のにわ、テラスが結のにわ、屋上が空のにわ、街路側が街にわ。
配置図青い枠が民間の建てる公募対象公園施設、橙の線がその収益で整備して市へ引き渡す園路と広場。右上の灰色の塊が換気塔。ⓒ東京建物
5.立体園路は地面から始まり、2層を巻いて上がって店舗棟の屋上に届く。階段とスロープが交互に現れ、手すりは細い縦桟を密に立てているので、歩くあいだ足元の樹冠が桟のすきまで途切れて見える。夏の昼にはこの上床が下の園路へ影を落とす。8月の博多の昼を思えば、あの影がそのまま滞在時間になる。
重なる2層中央が芝生広場、その上を園路が2層で通る。上床が覆った分だけ下が日陰になる。ⓒ東京建物
建物に取りつく地点園路がそのまま店舗棟の上層へつながる。奥には博多駅前のオフィス街。ⓒ東京建物
6.店舗棟は縦ルーバーで覆われ、階ごとにテラスが曲線で引いては出る。敷地の一角には地下施設の換気塔が立っており、撤去できないため周囲を花壇で囲って隠した。夜0時になると立体園路と店舗棟は閉まる。公園の地面は24時間開いたままで、早朝5時30分に上層がまた開く。
縦ルーバーテラスが階ごとに違う位置まで引くため、影の形が絶えず変わる。ⓒ東京建物
7.この公園は都市公園法の公募設置管理制度、いわゆるPark-PFIでつくられた。民間が園内に飲食店や売店などの収益施設を建て、そこから出る収益で園路や広場といった公共施設まで一体で整備し、自治体へ引き渡す仕組み。福岡市が管理する公園では今回が初めて。
8.福岡市が公募で示した負担上限は4,660万円、韓国の通貨でおよそ4億4,000万ウォンにあたる。事業者は2023年8月に優先交渉権を得て、翌年6月14日に計画認定を受けた。設置管理許可の期間は、収益施設の供用開始日から20年。
9.事業者が実際にいくら投じたかは公表されていない。延床約1,588㎡の鉄骨4階に入浴設備まで入ることを踏まえ坪150万円で見れば、店舗棟だけで7億円台。ここに226mの鉄骨園路と広場の舗装、植栽を足すと総額は11億円前後と推定される。市が出した額はその4%に届かない。
図の読み方棒の長さが金額。淡い棒が税金、濃い棒が民間資金。
10.3階と4階は都市型スパのTOTOPAが使う。料金は2時間2,980円で、ソフトドリンクとタオル代を含む。韓国の通貨で2万8,000ウォンほど。下の2層にはベーカリーのLand Bageri、イタリアンのGABBI HAKATA、カフェバーのPOSS COFFEE、ピッツェリアの400℃ PIZZA Piu、ビアバーのCONTINUE?が入り、1区画はまだ空いている。
3階と4階浴室まわりは岐阜多治見のタイルで仕上げている。事業者が公開した完成予想図。ⓒ東京建物
11.スパが1日200人を受け入れると見れば年商は2億円台。都市型温浴施設の営業利益率を15%とすれば3,000万円ほどが残る。下層の5店舗から取る賃料を売上の12%で計算すると、年5,000万円台。
12.ここから3,572㎡の清掃、夜間警備、植栽の維持費が抜けていく。残った額に20年を掛けても投資元本をようやく超える程度で、金利と減価償却、法人税を乗せれば残らない。公園事業そのものは儲かる商売ではない。その計算を承知のうえで、同じ会社が二度目に踏み込んだ。
図の読み方上2行が入る金、3行目が出る金。下2行が20年を掛けた結果。
13.公園は人を長く引き留められない。ベンチに座っている時間は無料で、無料の時間からは金が出ない。2時間の入場券は、その無料の時間を有料に変える。博多駅から4分の場所に荷物を預けて汗を流せる所がある、という事実も新幹線を乗り継ぐ人には値がつく。
空のにわ園路の終点が届く屋上広場。店舗棟の上に載るが、扱いは公園施設である。ⓒ東京建物
14.同じ会社が東京で先に試したこと。国立競技場前、約1.6haの都立明治公園が東京都で初のPark-PFIで、そのコンソーシアムの代表構成団体が東京建物だった。2023年10月に一部開園し、翌年3月22日にTOTOPAの1号店がその中へ入っている。料金は1時間1,980円から始まる時間制。その店が翌年、全国のサウナ番付で1位を取った。
先にやった場所東京・国立競技場前の都立明治公園。同じ会社が代表として担った最初のPark-PFI。ⓒ東京建物
15.回収先は公園の外にある。事業者が出した案内図には、公園から北へ数分の位置に「東京建物博多ビル」も記されている。1985年竣工、延床9,828㎡のオフィスビルで、この会社が福岡に持つ資産。2025年6月には博多駅から徒歩8分の場所に延床5,129㎡のオフィスを新たに着工した。福岡のオフィス開発へ16年ぶりに戻るという発表は、公園の工事が始まった後に出ている。
仕込まれたもの福岡出身の作家KYNEのパネルが園路脇に立つ。浴室の壁にも同じ作家のタイル作品が入った。ⓒ東京建物
16.博多駅から4分の3,572㎡の空き地が2024年秋の着工を経て、広場5つと226mの園路、サウナ1軒に変わり、福岡市が出した額は4,660万円だった。韓国で同じ計算をすると、20年という期間で先に止まる。公有財産の使用収益許可は5年が原則で、寄付採納した財産の無償使用も上限が20年、実務ではそれよりずっと短く切られる。11億円を20年でようやく回収する構図では、期間が半分になれば計算そのものが立たない。都市公園の中に浴場を公園施設として置けるかどうかも、別に確かめておく必要がある。