東京湾の入口に建つ市立美術館が、9月5日に改修を終えて再び開館した。年間運営費のうち観覧料と駐車料でまかなう割合は13%。赤字と言われてきたこの建物は、2024年に観覧者を倍に増やしてから工事に入った。
1.神奈川県横須賀市の横須賀美術館が、今月初めに来館者の受け入れを再開した。東京湾の入口、浦賀水道を前に、観音崎公園の森を背にした場所である。設計は2024年にプリツカー賞を受けた山本理顕。開館は2007年、所蔵品は約5,000点。
2.休館は昨年11月から約10カ月。老朽化した空調設備を更新し、外壁を補修して塗り直した。展示室の照明は蛍光灯からLEDに替え、部屋ごとに明るさを調整する仕組みも新しくした。展示室の拡張や増築はしていない。工事費は、市が公表した資料からは見つけられなかった。
3.建物は地下2階・地上2階、延床面積12,095㎡。ところが海側の芝生から見えるのは、低く伏せたガラスの箱ひとつだけだ。斜面を使ってボリュームの半分を地中に埋めたからで、森の上に頭を出さないための選択であり、潮風が運ぶ塩分にさらされる面積を減らす方法でもあった。

4.外皮は二重になっている。外側はガラス、内側は溶接した鉄板。ガラスが塩分を防ぎ、鉄板が実際の壁の役目を担う。鉄板には大きさの異なる丸い穴を開けた。直射日光の入らない北側は穴が大きく数も多く、南側は小さく少ない。大きな窓を設けるのではなく、穴の径で日射と熱の入り方を調整している。


5.展示棟の中央には、天井高約12m、幅4〜7.5mの細く高い展示空間が長く通っている。白い鉄板の壁と天井に開いた穴ごとに空が丸く切り取られ、大小の光のかけらが壁を伝って散らばる。2024年夏にこの建物を自ら案内した山本は、丸窓の外を船や人が通ると絵画のように見えると語った。


6.入口も二つある。海側からはスロープと正面玄関へ。山側の公園の道を歩いて下りてきた人は、段差なしにそのまま屋上広場に着く。屋上でしばらく海を眺めてから、足が建物の中へ向かうように組んだ動線だ。工事中も、正面の芝生「海の広場」と地下駐車場は閉めなかった。


7.設計者の選び方から違っていた。横須賀市は2002年、設計案を競うコンペではなく、実績と面接で設計者を評価する資質評価方式(QBS)で山本を選んだ。市にとって初の試みである。設計案は学芸員たちと2年以上議論しながら育てた。山本は、特別な人のためだけではない、外に開かれた美術館を目指したと振り返る。
8.開かれた美術館かどうかは、チケットを買わない人に何を差し出すかで表れる。ここでは屋上と芝生、美術書や展覧会図録を集めた無料の図書室がそれにあたる。プリツカー賞受賞を記念した2024年7月1日には、作品をすべて外した空の展示室を1日無料で公開し、建物だけを見せた。その頃までに累計来館者は210万人を超えていた。

9.建設にかかった費用は47億円。市議の小林のぶゆきが市の資料から計算したところ、美術品購入費16億円を含めた初期費用は69億円だった。
10.市が公表する年間運営費は3億8,000万円。同じ計算で、観覧料と駐車料を合わせた年間収入は約5,600万円。運営費の13%を自ら稼ぎ、残りは市の予算が埋めてきた。開館14年目ごろを基準にした数字である。
11.観覧者数は長く横ばいだった。開館初年度16万5,961人、2019年度15万1,431人、2022年度14万2,690人。15万人前後を行き来する間、運営費はほとんど減らない。建物を開けておく費用は、観覧者数ではなく面積と設備に比例するからだ。
12.そして2024年度、30万1,086人。3カ月開催した「鈴木敏夫とジブリ展」ひとつで17万2,658人が訪れた。市と神奈川県、イベント・旅行会社が実行委員会を組んで開いた、同館初の民官連携の展覧会だった。それまでの企画展の最高記録は6万3,138人。
13.運営費をその年の観覧者数で割ると、差ははっきりする。年3億8,000万円を15万人で割れば、市が1人に使う費用は約2,500円。30万人なら約1,300円。運営費は数年前の数字のため、現在の金額とは差がある可能性がある。
14.今年4月には料金にも手を入れた。所蔵品展の一般観覧料を450円に上げ、展覧会観覧者向けの駐車場最初の1時間無料を廃止した。市の公共施設の使用料改定に伴うもので、物価と施設維持費の上昇を理由に挙げている。企画展の料金は展覧会ごとに設定し、再開館最初の展覧会は一般1,200円。

15.数年前、市議会では美術館から撤退すべきだという主張まで出た。小林市議は、企業に名前を売るネーミングライツ、貸館中心の運営、歴史博物館への転換という三つの代案を示した。市が実際に選んだ道は、そのどれでもない。民間と実行委員会を組んだ企画展で観覧者を倍にしたうえで、2027年の開館20周年を前に、目に見えない設備にお金を入れた。

16.半分埋まったガラスの箱は、10カ月かけて空調と照明を替え、再び開いた。それに先立ち、3カ月の展覧会ひとつで17万人を呼び、年間観覧者を倍にしていた。韓国の公立美術館が同じ道をたどろうとすると、まず料金でつまずく。観覧料を条例で定めている館が多く、値上げには議会を通す必要がある。常設展は無料か数千ウォンにとどまり、運営費をチケットで埋める余地も狭い。
